緑の相談室


緑地の植栽基盤について

(株)野田坂緑研究所 代表 野田坂伸也


 我が国は気候温暖で雨量が多いので植物が繁茂し、山野は植生でおおわれている。土砂くずれなどで裸地が生じても数年もしないうちにまた植物で被覆されてしまう。

 そんな景観を見慣れているため、日本人は植物は植えれば容易に育つものと思っている。ましてや植栽の専門家の造園業者が植えた樹木は活着し正常に成長して当然、と思いこんでいる。

 ところが、これが大違いなのである。日本中で造園業者が植えた樹木がたくさん枯死している。枯死には至らないが生育不良というのは、順調に育っているものより多いのではないかと思われる。"自然豊かな"岩手でも同様である。嘘だと思ったら近くの公園などに最近植えられた樹木と、山で育っている樹木を較べてみると良い。公園に木にいかに生育不良木が多いか気づくはずである。

 なぜこういうことが起こるのだろうか。端的に言えば、土でないものを土だということにして植栽するからである。

 その根本的な原因は、我が国で公園・緑地工事は土木工事の一部として扱われ、土木技術者が公園・緑地工事を監理するのが通例となっているからである。

 土木工事においては、地盤は締め固めるものであって、土(「土砂」と表現される)は固まりやすいものが良質なのである。腐葉土のようなものは、締め固めようとしてもすぐ崩れてしまうから「不良土」として地下深く埋められてしまう。
 一方、植物にとっては有機物をたっぷり含んだふんわりした土(「土壌」)が、良い土なのである。

 このように一つの土木部門の中に、全く相反する二つの"土"が存在し、ほとんどの場合"土砂"を土だと考える人が一生のごく短い間だけ"土壌"を扱わなければならない、という状況が我が国の公園、緑地行政の大きな問題点なのである。

 しかし、最近になってこの状態に改善のきざしが現れた。国の「緑化工事共通仕様書」に「植栽基盤整備工」という工種が登場したのである。従来は、土木工事の造成工に続いてすぐ植栽工が行われたのに、これからはその間に植栽基盤整備工が挿入されることになった。つまり下図のようになる。

 それでは植栽基盤工とは具体的にどのような内容をさすのであろうか。まず、植栽基盤という用語であるが、これは次のように定義された。

植物の根が支障なく伸長して、水分や養分を吸収することの
できる条件を備えており、ある程度以上の広がりがあり、植
物を植栽するという目的に供せられる土層を植栽基盤という。
 なお、排水層があるときはこれを含む。

 つまり、植物が正常に生育できるような条件を有する土層(地盤と言ってもよい)だけを「植栽基盤」と呼ぶことにしたのである。

※ そのような良好な条件を有しているかどうか不明な場合は、「植栽地盤」と称する。まぎらわしいが、はっきり区別する。

植物が正常に育つために必要な地盤、即ち植栽基盤の条件を図に示すと下図のようになります。

図1:植物が正常に育つために必要な地盤の条件
図1:植物が正常に育つために必要な地盤の条件

 以下、この図に沿って説明する。

植物が正常に育つ地盤=植栽基盤  に必要な条件

1.地盤が固すぎないこと

地盤が固いと、根が伸びられない。また透水性が不良になって水がたまるし、空気の流通もストップしてしまう。土木工事の地盤造成は締め固めることであるが、これをやられるとほとんどの植物は生育できない固さになる。

 地盤硬度の測定は以前は山中式土壌硬度計で行うことが多かったが、今は孔を掘らなくても測定できる長谷川式土壌貫入計が使われている。その判断基準は下表の通りである。

表1:土壌硬度の判断基準
長谷川式土壌貫入計
S値(cm)
根の進入の可否 固さの表現 参考値
山中式土壌硬度計
(mm)
0.7 以下 多くの根が進入困難 固結 27 以上
0.7〜1.0 根系発達に阻害有り 硬い 27〜24
1.0〜1.5 根系発達阻害樹種有り 締まった 24〜20
1.5〜4.0 根系発達に阻害なし 軟らか 20〜11

2.透水性が良好であること

透水性が不良であると降雨の後、植穴に水がたまり根腐れをおこして樹木は枯死する。この反応は高温期にとくに激しく起こる。造成地盤の多くは、固結状態で透水不良であり、そのために植栽した樹木や草花の生育が不良になる。

 透水性の調査は長谷川式簡易現場透水試験器を用いて測定する。その判断基準は下表の通りである。

表2:長谷川式簡易現場透水試験器による透水性の判断基準
減水速度(最終減水能※)(mm/時) 10以下 10〜30 30〜100 100以上
判  定 不良 やや不良 優良

※ 減水速度は時間の経過とともに変化することがあるので、ほぼ安定する測定開始後
20分〜40分の値を採用している。これを最終減水能と呼ぶ。

3. 保水性

保水性が問題になるのは砂土のような特殊な土だけであるから省略する。

4. 養分(肥沃土)

下層地盤が露出した造成地の土はきわめて養分に乏しく、中でも窒素と腐植(有機物)
が欠乏している。これらは、有機質肥料と堆肥の大量使用によって補う必要がある。

 そのおよその目標値は窒素0.1%、腐植3%以上となっており、1u当たりバーク堆肥 40〜50リットル、乾燥鶏糞2Kg程度を散布して、深さ30〜40cmまで耕耘して地盤土とよく混合させる。鶏糞の量がかなり多いのですぐに植栽することは避けて、1週間以上待つ。鶏糞のかわりに汚泥コンポストや、油粕+骨粉(または米ぬか)などでもよい。バーク堆肥のかわりに牛糞堆肥などでもよい。

5. 酸度

土壌酸度はpH(H2O)で表されるが、日本原産の植物はほとんどやや酸性の土を好
む。pH5.0〜7.0くらいがたいていの植物がよく育つ酸度である。ツツジ、シャクナゲ類は強酸性を好むので石灰や石灰質の肥料(石灰窒素、熔りん、草木灰など)を施しては成らない。

6. 有害物質

これが問題になることはきわめて稀なので省略する。

7.植栽基盤整備の範囲

  良質の土層があっても、量が少なければ植物は大きく生長することができない。植栽基盤の整備範囲を決めるのはきわめて難しい問題であるが、現在は次のような基準が定められている。これは従来の植穴の大きさと比較すると数倍以上の大きさである。

8.植栽基盤整備の方法

不良地盤の改良法はいろいろあるが、通常は次の4つの方法のいずれかが選ばれる。

1) 客土盛土法

客土盛土法は、施工も容易で効果も大きいので、その用土が近くで安価にかつ大量に入手できる場合はよく採用される方法である。

2)客土置換法

街路樹などはこの方法で植栽されるが、置換する土量を可能な限り多くすることが望ましい。

3) 耕耘法 一層式

4)耕耘法 二層式

耕耘法は

 a.客土用土が入手できない
 b.地盤を耕耘することによって植物の生育可能な土に変えることができる。

という二つの条件があるときに採用される。高木植栽地では、深くまで改良しなければならないが、土壌改良材や肥料は表層にだけ混合する二層式の改良が経済的である。


以上は、公共工事など大面積の植栽工事の植栽基盤整備の解説ですが、庭園工事の土壌改良については「花林舎ガーデニング便り1〜4号」に詳細に解説してありますので、下記にお申し込みください。

  〒020-0161 岩手県岩手郡滝沢村篠木字苧桶沢 野田坂緑研究所
  tel 019-686-2524 fax 019-686-2925

 参考写真

1) 粘土地盤にそのまま植栽したため枯れてしまったナナカマド
2) 粘土地盤で排水不良のため植栽後10年たっても成長しないイチョウ
3) 締め固めた固結地盤に植栽して枯れ下がってしまった樹木

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