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日本樹木医会 岩手県支部長
神山安生
(緑の相談室 顧問)
(この論文は東北地方北部を対象に発表されたものです)
1.はじめに
年によって差がありますが、ここ十年来、春になると庭木のアカマツ・クロマツの針葉が赤変枯死する現象が見られます。新芽は枯れることがないので、全体が直ちに枯れることはありませんが、毎年被害を受けますと、新しく出る針葉が年々短小化し、ついには小枝が枯死するようになり、ひどい時は木全体が枯死することもあります。
この原因が寒風害によるものであることがわかりましたので、寒風害発生の仕組みと対策について述べたいと思います。
2.寒風害発生の仕組み
寒風害とは常緑樹の葉が冬の寒風にさらされて枯死する被害を言います。即ち、寒さの厳しい冬の空気は湿度が非常に低く、常緑樹の葉に寒風が吹き付けますと、葉から わずかずつですが水分が奪われていきます。
その時、根の張り方が浅く、根の周りの土が凍結していますと根は水を吸収することができず、葉に水分を補給することができなくなり、長い冬の間に葉は乾燥して枯れてしまいます。
針葉樹の場合、春暖かくなると急激に赤変するのでよく目立ちます。広葉樹の場合は被害を受けた時点で葉が灰白色になります。
3.アカマツ・クロマツの庭木になぜ寒風害が発生するか
山にアカマツを植林した場合、寒風害を受けることはほとんどありません。これは、アカマツ・クロマツの主根が直根性(垂下根とも言う)と言って、地中深く伸長する性質があり、土壌の凍結層の下に根が伸びていて、寒風害を受けにくくなっているためです。
ところが、庭木のアカマツ・クロマツの多くは、庭木生産者の畑で長年かけて樹形が整えられ、庭木としてできあがったものが掘りとられて移植されます。
すなわち、アカマツ・クロマツが本質的に持っている根が切られて無くなった状態で植えられるため、垂下根が再生して土壌凍結層の下に伸長するまでは寒風害を受けやすいわけです。
4.寒風害発生を助長する要因
寒風害発生を助長する大きな要因として土壌凍結と根の発育不良があげられます。
(1) 土壌凍結
ア)小雪
ここ十年来、暖冬が続きましたが、降雪量も少なく、地表が雪で保護されないため暖冬といっても厳冬期には土壌凍結が深くまで達したものと思われます。
なお、この前の冬は例年になく寒い冬でしたが、降雪量が多かったので思ったより寒風害は少ないようです。イ)場所
住宅等の北側や、南側に生垣や塀がある場所では、地表に日光が当たらないため相当深くまで土壌が凍結します。
ウ)高植え
過湿障害を防止するため高植えが行われていますが、高くなった分凍結しやすくなります。
また、周囲に庭石を並べて小さな築山をつくり、石に近接して植えているのをよく見かけますが、石は寒さをよく通すため、石の内側相当深くまで凍結します。(2) 根の発達不良
松類の基本的手入れとして「緑摘み」と「古葉摘み」がありますが、春移植して6〜7月に古葉摘みを行っているのをよく見かけます。このため、移植された松の最も大事な根の再生発育がほとんどできないことになり、毎年緑摘み、古葉摘みが行われるため、毎年寒風害を受ける原因になってます。
5.対策
(1) 極度の衰弱木
針葉が短小化して、小枝の枯死が発生している場合は、根の発育も悪く、全体 が極度に衰弱しているので、植物活性剤の樹幹注入や土壌潅注を行い、樹勢の回復の徴候が見えてから希釈した液肥を施用します。
(2) 古葉摘みの中止
移植後3〜4年間は古葉摘みをしないで、光合成を盛んにして 垂下根の再生発育を促進することが重要です。なお、極度の衰弱木の場合は緑摘みも伸び具合を見て加減する必要があります。
(3) 冬期対策
寒風害は厳冬期の寒風と土壌凍結によって発生しますので、垂下根が再生伸長して寒風害を受けないようになるまで3〜4年間は次の手当をします。
ア)地表の保護
土壌凍結を軽減するため、根株の周り半径1.0mから1.5mの範囲をワラ等で被覆します。
イ)防風ネットの設置
寒風の吹きつけを軽減するため、風上に防風ネットを張ります。
6.おわりに
アカマツ・クロマツは寒さに強い樹種ですので、庭木に寒風害が発生することなど考えられませんでした。しかし、内陸各地で発生する被害の症状から寒風害以外に原因が考えられないでおりました。
平成10年4月に岩手県石鳥谷町在住の方から庭木のアカマツ2本の診断・治療の依頼がありました。1本は全体の針葉が短小化し、葉色も青灰色で梢頭部では小枝枯れが発生していました。他の1本は梢頭部の3分の2は枯死しており、下枝にも枯死が発生し全体が枯死寸前のような状態でした。
4月17日に植物活力剤メネデールを1@づつ樹幹注入し、パイロゲン1000倍液を葉面散布と土壌潅注し、秋には土壌凍結防止のためワラ束で被覆し、主風方向に防風ネットを張ることにしました。
平成11年春には寒風害の発生もなく、回復も認められましたが、5月10日に再度メネデールを600ccと800ccを樹幹注入し、パイロゲンを葉面散布と土壌潅注しました。
手入れは、平成10,11年は無手入れとし、12年は緑摘みだけ行い、今では完全に回復しております。 このように、極度に衰弱していても原因に対処した治療を行うことにより立派に回復しますので、参考にしていただきたいと思います。(完)
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